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病床機能報告とは何か
平成26年より、国の新たな制度として「病床機能報告」制度が始まりました。
病床機能報告とは、各都道府県ごとに提出される、病院個別の病床機能のデータであり、地域の医療機関が担っている医療機能の現状把握が目的とされています。どの病棟にどのような設備があるか、どのような医療スタッフが配置されているか、また、どのような医療行為が行われているかが報告されます。オープンデータとして公表されているため、報告を受けた国のみならず、企業、個人もその結果の閲覧・分析を行うことが可能です。
なお、病床機能報告の対象となるのは、一般病床又は、療養病床を有する病院又は診療所です。
※「診療所」とは、患者を入院させるための施設(病床)を有しないもの又は、19人以下の入院させるための施設を有するものと定義されています。20人以上の入院設備を備える施設を「病院」と定義し、両者を区別しています。
病床機能報告制度の背景
高齢化社会が進む中、それに比例して医療・介護サービスの需要も高まりをみせています。
ところが、医師不足、医療機関の地域的偏りなどもあいまって、医療資源が一部地域で不足しており(大型病院で診察に何時間も待った経験をお持ちの方も多数いることでしょう)、適切な振り分けが急務課題として挙げられています。
そこで、地域包括ケア構想の下、医療機関の分化(病状に応じて相応しい規模の医療機関を受診)、連携の促進(大病院への紹介状の制度)などを促進させ、限りある医療資源を適切に有効活用することで、現況の改善と2025年問題への対処が制度趣旨とされています。
※地域包括ケア
(後ほど同様の語句がでてきます)、高齢化社会の抱える医療問題に対処すべく、「重度な要介護状態になっても、住みなれた地域で生活が送れるよう、住居・医療・介護・予防・生活支援を一体化させ提供しようとするもの」です。大病院に患者が集中する傾向を打開するために、「かかりつけ医」を推奨し、医療機関ごとの地域連携を目的としています。この制度に寄与する医療施設に対しては、医療報酬上の加算があります。
※2025年問題
いわゆる団塊の世代が後期高齢者(75歳以上)に達することで、介護・医療費などの諸問題の急増が見込まれる事態のことです。世帯数の見込みは、約1,840万世帯と言われています。厚生労働省の推計によると、2025年の医療保険給付は約55兆円にのぼり、現在より10兆円以上増加する見込みです。政府は、これら高い確率で起こりうる事態に対処すべく、本題のオープンデータや地域包括ケアシステムを構築しようとしています。
病床機能報告がオープンデータである理由
先の「病床機能報告制度の背景」でご説明したとおり、医療資源を適切に振り分ける必要があるのですが、この実現のためには、国や地方公共団体が、具体的な患者個人に対し医療機関を振り分ける(アナウンス・リードする)わけではなく、「患者自身が選択をする」ことで、制度趣旨を実現する必要があります。
選択のためには情報を「知る」必要があります。そこで、提出された情報をオープンにすることで、個人の選択に寄与しているわけです。
他にも、医療機関が閲覧に供するという側面もあり、その場合、地域連携のため、健全な病院経営のためなどに活用が見込まれます。
病床機能報告の具体的な報告内容 ~カテゴリ~
報告内容定められている医療機能は、「様々な状態の患者に見合った病床で、状態に相応しい、より良質な医療サービスを受けられる体制作り」をテーマに、以下の4カテゴリに分類されています。
病床機能報告の報告内容:1.高度急性期
急性期の患者に対し、高度な医療を提供する機能
例:救命救急病棟、集中治療室、ハイケアユニット
病床機能報告の報告内容:2.急性期
急性期の患者に対し、医療を提供する機能
※急性期とは、発症後急激に健康が失われていく状態を指し、「かかりつけ医」の制度が推奨される状態を指します。
例:地域包括ケア病棟入院料
病床機能報告の報告内容:3.回復期
急性期を脱した患者に対し、在宅復帰に向けたケアを提供する機能(ADLの向上や、在宅復帰を目的としたリハビリテーションを集中的に提供します)
例:地域包括ケア病棟入院料、回復期リハビリテーション病棟入院料
病床機能報告の報告内容:4.慢性期
長期に渡って治療が必要な患者を入院させる機能(重度の意識障害、筋ジストロフィー患者、難病患者などはこの分類です)
例:療養病棟入院基本料
病床機能報告のウィークポイント
これまでに述べさせていただいた通り、医療従事者の不足、患者の増加、受診機関の偏りを解消するために病床機能報告があるわけですが、公開されている情報は、見づらいという意見もあり、また、各公共団体でデータが別個になっているため、横断的な比較検討には向いていません。
そこで弊社では、これらバラバラのデータをまとめて、閲覧・分析向けにクレンジングしたデータを提供させていただいております。データを取りまとめることで、例えば、A県とそれに隣接するB県の比較、日本全体の状況把握など、分析の裾野を広げることが可能となります。
※2018/10現在のところ、弊社が対象にさせていただいているのは、基本的に、医療関係者様のみとなります
病床機能報告データの活用方法
病床機能報告データは、(各医療施設の自己申告ではあるものの)見込みや予想ではなく、結果のデータです。
その意味では、データの信頼度は高いといえ、現状や展望の分析に向いているデータであるといえます。
その特性を生かした活用方法を2例を挙げさせていただきます。
病床機能報告データ活用方法①:営業活動への活用
先ほどのご説明にもあったように、各公共団体ごとにバラバラで報告されるものではありますが、
提供すべき内容は統一に定められています。
高度急性期・急性期・回復期・慢性期のカテゴリです。
ここの注目し、例えば、自社の医療商材(入院ベット、点滴用の器具、針、医療用毛布等)が、どの病院にマッチングするかを分析することで、効率的な営業活動を行うことが可能となります。
また、当制度は平成26年から始まっていますので、すでに4年のデータの蓄積があります。
これを分析することで、その病院がどの方向性にシフトしてきているか、そこに必要となるであろう商材は何であるかが明らかになってきます。
病床機能報告データ活用方法②:病院視点での分析
近隣の病院が、何を強みとしているか、また何を強みにしていくつもりなのか、を分析することで、競合をさけ、ひいては医療資源の適材配置に寄与することが可能となります。(いわゆる過疎地域に、高度急性期病院が2施設並んでいるのは、あまり意味がないですよね)
病院もボランティア経営ではないため、利益を生み出さなければならず、またそれが病院存続の必須条件でもあるため、競合を避けることも戦略の一つとして重要ではないでしょうか。
医療に特化したコンサルタントの方なども、同様の視点で活用いただくことが可能といえます。
医療情報の現実
医療にまつわる諸問題は、もはや現代社会と切っても切り離せない重要課題となっています。
国も中長期的な試みとして、本題のようなオープンデータの提供など試みを行っていますが、残念ながら、それらを有効活用する手立てが整っていない(追いついていない)ことも、1つの現実です。
弊社のクレンジングデータが、それらの一つの橋渡し的な役割を担えれば幸いと考えています。
更に、ご要望ございましたら、データ分析自体につきましてもお力添えさせていただきます。(Power BIによる分析など)。
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